劇団四季ファミリーミュージカル「むかしむかしゾウがきた」について
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劇団四季ファミリーミュージカル「むかしむかしゾウがきた」は
故・長崎源之助氏の児童文学「むかしむかしゾウがきた」(1961年)を原案にした。
劇団四季のオリジナルミュージカルです。
原作について
初年は1980年の日生名作劇場、
1990年には「九郎衛門」というタイトルで、パルコ劇場で上演されました。
ただ、この全集版もフォア文庫版も、現在絶版なので、
図書館などで探すしかなさそうですね。
長崎源之助氏の児童文学の中では、「人魚がくれたさくら貝」は1981年に映画化もされ、
私も読んだ記憶がありました。
他作品は読んだことがないのですが、
「戦争の悲惨さを伝える」ことが根底にある作品が多いそうです。
この「むかしむかしゾウがきた」は、日本の戦国時代を舞台にしていますが、
子どもたちに愛されたゾウが、
戦争がはじまると、
食べ物をたくさん食べるから、
ゾウが逃げて暴れたら大変だ、
などの理由で殺されそうになる、というストーリーは、
明らかに、太平洋戦争中に上野動物園はじめ、多くの動物園で飼育されていたゾウを、
軍の命令で餓死させたり、薬殺したりしたことが意識されていると思います。
さすがに、昭和の時代にはゾウのような大きな動物を連れて逃げることは不可能でした。
戦国時代は、夜は街灯もなく、仮に誰かに見られたとしても電話のような連絡手段もない、
とても不便で、現代では考えられないような危険がたくさんありますが
だからこそ、ゾウの世話役だった太郎衛門は、妻と息子に九郎衛門を連れて山を越えて逃げろ、
と言いつけるのです。
舞台美術・衣装・演出
「むかしむかしゾウがきた」は、日本の戦国時代を舞台にした和ものミュージカルです。
雰囲気は劇団四季公式動画でご覧になってみてください。
幕や舞台セット、進行役の「ひろめ屋」の口上は歌舞伎を意識したもの、
劇中、ゾウの九郎衛門を連れた逃避行の場面は人形浄瑠璃、
紙の雪と白子(白い衣装の黒子)の踊りで表現される「吹雪」など、日本の伝統芸能を取り入れた演出が多くみられます。
舞台美術と衣装は、「キャッツ」をはじめとする劇団四季の多くの舞台の美術を担当し、
大阪芸術大学客員教授でもある、土屋茂昭氏の手によるもので、
衣装については、日本舞台美術協会の、2014年度伊藤熹朔賞 本賞に選ばれています。
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