九郎衛門とアマラ
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劇団四季ファミリーミュージカル「むかしむかしゾウがきた」のポスターやプログラム表紙のイラストの九郎衛門。
多摩動物園のアマラ(右側です。この写真が撮影された2015年3月は10才)。
春は名のみの・・・で、春らしい光景には出会えず。通りかかったスリランカゾウのアマラとヴィドゥラが相変わらず仲いいので、今日のところはこれで。(南) pic.twitter.com/1h27cZU1Aq
— 多摩動物公園[公式] (@TamaZooPark) 2015, 3月 20
似ていませんか?
私はそっくりだと思うのですが。
イラストを描いたのは、高橋常政さん、という方で、「王子とこじき」「エルコスの祈り」など、劇団四季ファミリーミュージカルのポスターデザインを多く手掛けていらっしゃいます。技法はテンペラ画らしいです。
「むかしむかゾウがきた」は東洋風なので少し雰囲気が違いますが、
「王子とこじき」のような洋ものの絵柄ではタリアルネサンス期絵画のような印象があります。
九郎衛門とアマラは同じアジアゾウですが、
九郎衛門はインドゾウ、アマラはスリランカゾウ、で亜種が異なります
インドゾウとスリランカゾウでは、スリランカゾウの方が体がやや小さくて尻尾以外の体毛が目立ちません。
東山動物園のコサラ・アヌラを写真や動画で見ても(アマラたちよりは大人)、
インドゾウよりもコロン、としていてかわいいのです。
九郎衛門のイラストをかわいい雰囲気にするために、スリランゾウの女の子、アマラをモデルにしたのかな、と思っているのですが。
ところで、「九郎衛門」の正確な雌雄の設定は不明です。
殿さまがオスメス確認してから名前を付けた様子はないし、
インドゾウなのに目立つキバがないことからすると、
もしかしたら女の子だったのかもしれない。
九郎衛門は、大きさからすると、アジアゾウの7才くらいに見えますが、
本当に子どものゾウ、という設定なのではないようです。
肩高が2mを超える大人のゾウの大きさでは、人間2名で操作する構造が難しいため、
今の大きさがギリギリなのではないかと思います。
インドから中国にわたってしばらく雑技団で曲芸をし、その後日本に来た、という経緯からすると、
10才くらいだったのかもしれません。
動物園でゾウをよく見るようになり、ターゲットトレーニングのことなども知ってから、
改めて舞台を見ると、この物語のような展開にならなかったとしても、
九郎衛門は、どのみち、あまり長生きはできなかったのではないか、と思えてきます。
これは脚本が間違っている、ということではなく、
戦国時代の日本では、正しいゾウの飼育知識がない、ということです。
ゾウの主食は芋・人参ではなく、草ですし、
体を拭かれるよりも、砂浴び泥浴びをしたいでしょう。
雪崩が起きるような雪が降り積もる地方で、現在のような暖房もなく、
何冬越すことができただろう?
唐のくにから、友好のあかしとしてある戦国大名に贈られた九郎衛門は、日本で1年と生きていませんでしたし、
上に書いたような理由で、きっと長生きはできなかったと思います。
スリランカと日本の国交樹立60周年の記念に贈られたアマラ、ヴィドゥラは、
この国で、幸せでありますように。
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